朝ドラあんぱん「伍長」は軍隊階級でどれだけ偉い?海軍、陸軍、自衛隊の違いも解説

朝ドラあんぱん「伍長」は軍隊階級でどれだけ偉い?海軍、陸軍、自衛隊の違いも解説

朝ドラ「あんぱん」で柳井嵩が伍長になったことは、旧日本陸軍の階級制度における重要な一歩であり、兵卒の上にあたる「下士官」の最下位ながら、部隊の指導や管理を任される責任ある立場でした。

テレビを観ていて、「伍長ってどれくらい偉いんだろう?」って思いませんでした?

普段、軍隊の階級について深く考える機会はなかなかないからこそ、柳井嵩がたどり着いた「伍長」という場所が、当時の日本軍で一体どのような意味を持っていたのか、気になって仕方ありません。

そして、当時の軍隊の階級がどういう仕組みになっていたのか、現在の自衛隊とは何が違うのか、そのあたりも詳しく知りたいですよね。

この記事では、当時の厳しい軍隊生活の中で、階級が人々の運命や人間関係にどう影響したのか、具体的なエピソードを交えながら掘り下げていきます。

この記事でわかること

  • 旧日本陸軍の階級制度
  • やなせたかしの兵役経験
  • 幹部候補生と昇進の裏側
  • 暗号班の任務と実態
  • ドラマ『あんぱん』との対比

 

伍長とは?朝ドラ「あんぱん」に見る柳井嵩の昇進と、その重み

朝ドラ「あんぱん」の第11週では、主人公・柳井嵩が「伍長」に昇進する場面が描かれていました。この「伍長」という階級は、旧日本陸軍において「下士官」というカテゴリの中で最も下の位に位置するものです。

具体的には、兵長や上等兵といった「兵」の階級よりも上位にあたるため、彼にとっては軍隊生活における一つのステータスだったと言えるでしょう。

嵩が伍長になれたのは、幹部候補生の試験に合格し、「乙種幹部候補生」(通称:乙幹)として下士官になった結果です。これは、兵士の中から将来のリーダーを育てる制度の一環でした。

作中では、彼の同期である目黒がより上位の「甲幹」に進んだのに対し、嵩は「乙幹」として伍長へと昇進しました。

この昇進は柳井嵩にとって、肩書き以上の意味があったと感じています。

彼は、「軟弱にして気迫に欠ける」と自認する青年が、軍隊という異質な環境で「文字通り叩き直され」、二年目には身体も頑丈になり、要領を覚えて適応していったと語っています。

そんな中で得た伍長という立場は、彼が軍隊の中で自らの居場所を確立し、一定の役割を担うことになった証でもありますね。

 

旧日本陸軍の階級制度:複雑な全体像とその指揮系統

当時の日本の軍隊、特に旧日本陸軍の階級制度は、現代の私たちが想像するよりもはるかに複雑で、厳格な指揮系統が敷かれていました。

この階級は大きく分けて「兵」「下士官」「士官」の3つに分類されていました。それぞれの分類の中で、さらに細かく階級が分かれていたのをご存知でしたか?

旧日本陸軍の階級一覧

  • 伍長は軍隊生活におけるステータス
    やなせたかしが伍長に昇進したことは、旧日本陸軍の階級制度において下士官の中で最も下の階級であり、兵長や上等兵の上位にあたるとされます。軍隊生活における一つのステータスでした。
  • 下士官のリーダー的存在
    伍長は兵士たちをまとめたり訓練する立場であり、部隊の指導や管理など、責任ある仕事を任される役割です。
  • 幹部候補生として
    やなせたかしは、幹部候補生の試験に合格し、「乙種幹部候補生」(乙幹)として下士官である伍長に昇進しました。これは兵士の中から将来のリーダーを育てる制度です。
  • 比較的安全なポジション
    伍長に昇進したやなせは、大隊本部の「暗号班」に配属されます。この職務は乱数表を使った暗号の解読と指令の伝達で、命令が少しでもズレると部隊が壊滅する可能性のあるプレッシャーのかかる役職でしたが、教練や戦闘が主体の現場勤務とは違い、比較的安全なポジションであったと本人も語っています。

    将校コース(甲幹)に進んでいれば、満州などの激戦地に送られていた可能性が高かったため、“運命の分かれ目”と言えるでしょう。

筆者の見解では、この「伍長」という階級、そして暗号班への配属は、やなせたかしのその後の人生、特に彼の創作活動に大きな影響を与えたはずです。

直接的な戦闘から一歩引いた場所で、彼は戦争という現実を、より多角的に、そして深く見つめることができたのかもしれません。

旧日本陸軍の階級は、大きく4つの分類に分けられていた

当時の軍隊は、現代の私たちが思うよりもはるかに階級が細分化されており、その序列は絶対的なものでした。大きく分けて以下の4つの階級に分かれていました。

スクロールできます
階級の分類具体的な階級(高い順)役割
士官大将・中将・少将
大佐・中佐・少佐
大尉・中尉・少尉
将校クラス、部隊全体を指揮するリーダー
准士官准尉将校候補の中間職
下士官曹長・軍曹・伍長兵士をまとめる中間リーダー
兵卒兵長・上等兵
一等兵・二等兵
一般兵士

この中でも、柳井嵩が所属していた小倉連隊の登場人物たちは主に「兵卒」と「下士官」の階級に位置していました。二等兵から始まり、年数や勤務態度によって一等兵、そしてさらに優秀と評価された者が上等兵へと昇進していったのです。

 

伍長という「下士官」のリーダー的存在

伍長は下士官の中では一番下ではあるものの、兵卒より上の存在であり、部隊の指導や管理など、責任ある仕事を任される役割でした。

これは、やなせたかし自身が「おバカタレント」としてブレイクしたつるの剛士さんが後に“大卒”になったように、その道程において努力と適応が求められた結果と言えるかもしれません。

筆者の意見では、伍長という階級は、現場の兵士と士官との間で、文字通り「橋渡し」の役割を担っていたのだと思います。

上からの命令を正確に伝え、下の兵士たちの状況を把握し、報告する。その両方の責任がのしかかる、まさに「中間管理職」的なポジションだったのでしょう。

柳井嵩が配属された「暗号班」の特殊性:命を左右する運命の分かれ目

伍長に昇進したやなせたかしが配属されたのは、大隊本部の「暗号班」でした。これは、彼の軍隊生活、ひいてはその後の人生を大きく左右する重要な転換点となります。

暗号班の主な任務は、乱数表を使った暗号の解読と、上層部からの指令を部隊に伝達することでした。これを聞くと、「ああ、事務仕事か」と思うかもしれませんが、そのプレッシャーは想像を絶するものだったに違いありません。

なぜなら、命令の時間や場所が少しでもズレれば、部隊が壊滅する可能性があったからです。文字通り、多くの兵士の命が彼の解読と伝達の正確さにかかっていたわけです。想像すると、胃がキリキリしますね。

この暗号班という役職には、もう一つの側面がありました。それは、教練や戦闘が主体の現場勤務とは違い、比較的安全なポジションであったという事実です。

やなせ本人も、後に「教練より暗号の勉強の方がよほど楽だった」と語っているほどです。これはまさに「塞翁が馬」(人生の幸不幸は予測不能。一見不幸に見えることでも、後に逆転することもあり、逆もまた同様)という中国の故事に由来する言葉がぴったりと当てはまる状況ですね。

彼のような下士官クラスで暗号業務に就く者は、“内地に残される”運命を持ちやすかった点も見逃せません。もし彼が将校コース(甲幹)に進んでいれば、満州などの激戦地に送られていた可能性が高かったのです。

この暗号班への配属が、やなせたかしにとっての「運命の分かれ目」だったと強く感じます。

戦争という極限状況下で、彼は一歩引いた場所から全体の状況を見つめ、命の尊さ、平和への切望をより深く心に刻んでいったのでしょう。

戦後、彼が「ぼくは戦争は大きらい」と語った背景には、表も裏も知る者としての、そして生き延びた者の“複雑な後悔と使命感”が色濃く影響し、それがのちの創作、特に「アンパンマン」という作品に繋がっていくことになります。

彼の代表作の一つに『アンパンマンの遺書』という著書があるのも、彼の戦争体験の重みを物語っていますね。

 

『あんぱん』に描かれた軍隊生活:リアルな人間模様と階級を超えた絆

朝ドラ「あんぱん」の第11週で描かれた嵩の軍隊生活は、やなせたかしの実体験を忠実に下敷きにした描写が多く見られ、その人間関係の複雑さや、階級がもたらす影響がリアルに描かれていました。

主要な登場人物と階級の関係

小倉連隊の主要な登場人物と彼らの階級、そして柳井嵩との関係性をまとめました。

スクロールできます
キャラクター名階級役割・柳井嵩との関係
島仙吉大尉中隊長。部隊の偉いさんだが気さくな性格。
嵩が「軍人勅諭」を暗唱する姿に目を留め、幹部候補生試験に推薦した。
目黒新階級不明嵩の同期で幹部候補生「甲幹」。嵩と同じく幹部候補生試験を受験。
粕谷将暉軍曹人物相関図に記載されている軍曹だが、詳細は不明。
神野万蔵軍曹嵩が所属する内務班の班長。
中間管理職として部下には厳しいが、兵卒の八木にはタメ口を許すなど人間味も。
八木とは「同年兵」だったことが判明し、謎が解けましたね。
柳井嵩伍長主人公。二等兵から伍長に昇進。暗号班に配属され、比較的安全な場所で任務にあたった。
八木信之介上等兵兵卒ながら周囲から一目置かれるインテリの上等兵。
大卒のエリートだが幹部候補試験を受けない。嵩を気にかける優しい一面も。
そのモデルは「新屋敷上等兵」とされる。
馬場力古参兵/上等兵新兵教育係の古参兵。襟章は「赤地に三つ星」から上等兵と推測。
新兵、特に嵩に理不尽な暴力を繰り返す。
甲田鉄古参兵新兵指導にあたる古参兵。
加畑安雄一等兵新兵の一人。
今野康太一等兵嵩の幼なじみ。共に小倉連隊に転属。
週番士官少尉?襟章「赤二本線に一つ星」から少尉と推測。
幹部候補生試験に遅れそうになった嵩を叩き起こし激怒。
田川岩男所属・階級不明嵩の小学校の同級生で元いじめっ子。中国の奥地で嵩と再会。

個人的に衝撃を受けたのは、神野班長と八木上等兵の関係です。階級が上の軍曹が、下の階級である上等兵の言うことを聞く(しかもタメ口!)なんて、マジでやばい、と思いませんか?

でも、その謎が「元々、同年兵だ」という一言で解き明かされた時、軍隊という組織の中にも、階級だけでは測れない人間関係や、古くからの絆があったことに感動しました。

柳井嵩の奮闘と理不尽な暴力

「あんぱん」の描写では、小倉連隊に転属した嵩は、古兵たちから目をつけられ、毎日怒鳴られて叩かれる辛い日々を過ごしていました。特に馬場力のような古参兵は、新兵に理不尽な暴力を繰り返し、嵩を執拗にいじめていたんです。

正直、見ているのがつらかったです。

そんな中、嵩を救ったのは八木上等兵(妻夫木聡)でした。彼は厳格な態度で後輩たちに接するものの、決して暴力を振るわないインテリでした。

八木は嵩に、古兵からのいじめから逃れるための助言を与え、中隊長に目をかけてもらうきっかけを作ります。その結果、嵩は幹部候補生試験を受験することになるのです。

妻夫木聡「八木上等兵は何者?」戦友とサンリオ創業者か?“殴らない”正義を考察

NHK朝ドラ「あんぱん」で妻夫木聡さんが演じる八木信之介は、漫画家やなせたかしの人生に大きな影響を与えた二人の実在人物が元となる創作キャラクターです。(戦時中の […

試験当日、嵩は徹夜で勉強したにもかかわらず、うっかり寝坊してしまうのですが。週番士官に怒鳴られながらも、無事に試験に合格し、「乙種幹部候補生」として伍長に昇格することができました。

このエピソード、やなせたかしの実話に基づいているそうで、軍隊で馬の不寝番をしていた際に居眠りをしてしまった、というものがあるそうです。まるで、彼の人生は常に紙一重で運命が転がっていったような気がしますね。

 

旧日本陸軍と旧日本海軍、現在の自衛隊:階級制度の違い

日本軍の階級制度と言えば、陸軍と海軍で異なる点があるのはご存知でしょうか? 同じ「日本軍」という括りでも、それぞれの組織文化や特性に合わせて、階級の名称や分類が異なっていたんです。

この違いを深掘りすることで、当時の軍隊組織への理解がぐっと深まります。

海軍の階級制度:陸軍との対比で見る特徴

旧日本海軍の階級制度も、陸軍と同様に「士官」「准士官」「下士官」「兵」に大別されていました。その名称や細分化の仕方に、海軍ならではの特徴が見て取れます。

例えば、陸軍の「軍曹」「曹長」にあたる下士官の階級は、海軍では「兵曹」という名称が使われていました。そして、陸軍の「伍長」は、海軍では「三等下士」などと表記されていた時期もあります。

海軍は、陸軍よりも早くから技術部門や専門職の重要性を認識しており、兵科以外にも「機関科」「軍医科」「主計科」「造船科」「造機科」「造兵科」「水路科」など、多岐にわたる専門分野が細かく設定され、それぞれに階級が設けられていました。

これは、艦船の運用や維持には高度な専門知識が不可欠だったことを物語っていますね。

この陸海軍の階級の違いを見ると、それぞれの軍種が持つ「顔」が見えてくるようで面白いです。

陸軍は「兵科」が基本にあり、兵士を率いることに重きを置いたシンプルかつ力強い構造。対して海軍は、複雑な機械や航海術、医療など、多様な専門性を重んじた、ある意味でより「現代的」な組織体系を目指していたようにも思えますね。

陸軍と海軍の主な下士官・兵の階級比較(一部抜粋)

スクロールできます
分類旧日本陸軍の階級(例)旧日本海軍の階級(例)
下士官曹長、軍曹、伍長兵曹長、一等兵曹、二等兵曹、三等兵曹 / 三等下士
兵卒兵長、上等兵
一等兵、二等兵
兵長、上等兵、一等兵、二等兵

ご覧の通り、陸軍と海軍では階級の名称が異なり、特に下士官や兵の分類に顕著な違いがあります。これは、それぞれの組織が担う任務や、求められる能力の違いを反映していたと言えるでしょう。

 

現在の自衛隊の階級とは?旧日本軍との大きな違い

旧日本軍の階級制度を見てきましたが、では現在の日本の自衛隊の階級は、当時と同じなのでしょうか? 結論から言えば、現在の自衛隊の階級は、旧日本軍とは大きく異なり、その名称も体系も現代的なものへと変化しています

ここからは、筆者の知識から補足させていただきます。この情報はご自身でも確認されることをお勧めします。

自衛隊の階級は、陸上・海上・航空の各自衛隊でそれぞれ独自の名称を持っていますが、大まかな分類は以下の通りです。

  • 幹部(将官、佐官、尉官):部隊を指揮・統率する役割。旧日本軍の「士官」に相当します。
  • 准尉:専門的な技能を持ち、幹部と陸曹の間で指導的役割を担う。
  • 陸曹(曹長、1曹、2曹、3曹):現場のリーダーとして、隊員を直接指導・育成する。旧日本軍の「下士官」に相当します。
  • 陸士(陸士長、1士、2士):一般隊員。旧日本軍の「兵」に相当します。

旧日本軍の「伍長」は、下士官の最下位であり、兵士をまとめる役割を担っていました。現在の自衛隊でこれに最も近い役割を果たすのは、「陸士長」から「3曹」のあたりの階級になるでしょうか。

陸士長は、一般隊員の中でリーダーシップを発揮する立場であり、3曹は小規模なチームを率いる責任を負います。

名称こそ変われど、現場の隊員を束ね、直接指導する「中間リーダー」の重要性は、時代が変わっても変わらないのだな、と強く感じます。

むしろ、現代においては、より高度な専門知識や多様な状況への対応能力が求められるため、その責任は増していると言えるでしょう。

階級章の視覚的な違い:制服に刻まれた序列の証

軍隊において、階級は口頭だけでなく、制服に付けられた「階級章」によっても明確に示されていました。旧日本軍の階級章は、そのデザインによって、どの階級に属するかが一目でわかるようになっていたんです。

「あんぱん」の劇中にも、階級章の描写が出てきます。例えば、古参兵の馬場力の襟元には「赤地に三つ星」の階級章がついており、これが「上等兵」であることを示唆していました。

また、幹部候補生試験の日に登場した週番士官の襟元には「赤二本線に一つ星」があり、これは「少尉」ではないかと推測されていました。

これらの階級章は、兵士にとっての誇りや、責任の重さを象徴するものでした。実際に、旧日本陸軍の階級章には「胸章」や「襟部識別章」といったものが存在し、下士官兵用には茶褐色の絨の台座が付いていたとされます。

古い巻脚絆(まきげはん:すねに巻きつける布)などの被服の切れ端が再利用されていた、なんて話も残っています。

階級章のデザイン一つにも、その時代の背景や、軍隊の質実剛健な精神が宿っているようで、とても興味深いです。

特に戦時中、物資が不足する中でも、身につけるものに意味を持たせ、精神的な支えとしたのでしょう。

 

階級と「人間関係」に刻まれたもの:理不尽と絆の狭間

軍隊という組織では、階級が人間関係のすべてを決定すると思われがちです。しかし、「あんぱん」の描写や、やなせたかしの実体験からは、階級だけでは測れない、複雑な人間模様が浮かび上がってきます。

階級を超えた人間関係の妙

神野軍曹と八木上等兵の関係は、その最たる例でしょう。階級上は軍曹である神野が、上等兵の八木の言うことをなぜか聞き入れ、彼がタメ口を使うことすら許していました。この謎は、二人が「元々、同年兵」だったという事実で解き明かされます。

軍隊という厳格なヒエラルキーの中にあっても、入隊時期が同じという「同期」の絆は、階級の壁を超えるほどの重みを持っていたのです。これは、階級がすべてを支配するわけではないという、非常に人間らしい一面を見せてくれます。

このような人間関係の描写は、ドラマに深みを与え、私たち視聴者に「軍隊」という一見、冷徹な組織の中にも、確かに人間的なつながりや感情が存在したことを教えてくれます。

理不尽な暴力と、八木信之介の存在

一方で、軍隊には理不尽な暴力が日常的に存在していました。古参兵の馬場力は、新兵の柳井嵩たちに執拗な暴力を繰り返し、精神的にも肉体的にも追い詰めていきます。

これは、当時の軍隊が持つ暗部であり、多くの兵士が耐えなければならなかった現実でした。

そんな中で、八木信之介の存在は、嵩にとって大きな救いとなりました。彼は大卒のエリートでありながら、幹部候補試験を受けず上等兵にとどまっていました。そして何より、彼は決して暴力を振るいませんでした

それどころか、新兵いじめを咎め、嵩を気にかけるインテリとして、彼に助言を与え、中隊長の目に留まるきっかけを作ってくれたのです。

やなせたかしは、軍隊に入隊する前、自分を「軟弱」「生意気」「権威に対して反抗する」性格だと評し、軍隊には「絶対向かない」と考えていました。

しかし、軍隊で「文字通り叩き直され」、身体も頑丈になり、要領を覚えるほどに「適応していった」と述べています。それでも、彼の内心には「早く俗世間に帰りたかった」という強い思いがあり、戦後には「ぼくは戦争は大きらい」と語っています。

この「生き延びた者の“複雑な後悔と使命感”」が、後の彼の創作活動に色濃く影響を与えているようです。

理不尽な環境下で、たった一人でも理解者や、正しい道を示す人がいることの重要性は計り知れませんよね。

八木上等兵は、柳井嵩にとって、まさに暗闇の中の灯台のような存在だったのでしょう。

その経験が、後に彼が描く作品の中に、弱きを助ける「正義の味方」というテーマとして昇華されていったのだと考えると、本当に胸が熱くなります。

 

まとめ:あんぱんの「伍長」は軍隊の階級はどれぐらい?

朝ドラ「あんぱん」で描かれる柳井嵩の伍長昇進は、階級アップ以上の意味を持っていました。それは、旧日本陸軍という厳格な組織の中で、彼がどのような役割を担い、どのような運命の分岐点に立ったのかを象徴する出来事だったのです。

旧日本軍の階級制度は、士官、准士官、下士官、兵卒という大きな区分があり、その中にも細かな序列が存在していました。柳井嵩がなった「伍長」は、下士官の最下位でありながら、兵卒をまとめるリーダーとしての重い責任を負う立場でした。

そして、彼が配属された「暗号班」は、命を左右するプレッシャーを伴う一方で、比較的安全な場所であったことが、彼の“運命の分かれ目”となったことが分かりましたね。

当時の軍隊では、階級が絶対的な力を持つ一方で、神野軍曹と八木上等兵のような「同年兵」の絆が階級を超えた人間関係を築くこともありました。

このブログ記事を通して、朝ドラ「あんぱん」の物語が、単なるフィクションではなく、やなせたかしのリアルな体験に基づいていること、そして当時の軍隊の階級制度や人間関係の複雑さを、少しでも深く理解していただけたなら、筆者としてこれほど嬉しいことはありません。

ぜひ、ドラマを観ながら、それぞれの登場人物が背負う階級の重みや、その中で育まれる人間ドラマにも注目してみてください。彼らの生き様が、きっとあなたの心にも響くはずです。

覚えておきたいポイント

  • 旧陸軍階級は兵・下士官・士官
  • 伍長は下士官の最下位リーダー
  • 上等兵は優秀な兵卒の階級
  • やなせは居眠りで乙幹へ降格
  • 乙幹降格で暗号班の内地任務
  • 暗号解読は一桁ミスも許されない
  • 軍隊は年功序列・学歴重視
  • 特務士官は叩き上げ士官
  • 八木上等兵は信頼できる存在
  • 弟千尋は海軍予備学生で少尉