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【独自考察】朝ドラ「あんぱん」のキュウリオは、なぜサンリオと似ているのか?創業秘話から読み解く制作陣の巧妙な仕掛け


2025年放送のNHK連続テレビ小説『あんぱん』。本作の中で、今注目を集めているのが、主人公と深く関わる「八木信之介」というキャラクター、そして彼が経営する会社「九州コットンセンター」から「キュウリオ(キューリオ)」へと社名変更されるドラマ展開です。
調べてみると、これはサンリオの創業秘話と深いつながりがあることが分かってきました。この架空の会社が、なぜ「キュウリオ」の名になったのか?

今回は、その謎とサンリオとの驚くべき史実とのリンクについて、考察もまじえながら徹底解説します。
この記事でわかること
- 朝ドラ「キュウリオ」の名前の由来
- サンリオ創業時の実話との関係性
- 1973年が日本文化史の転換点だった理由
- やなせたかしとサンリオの深い繋がり
- 戦後復興から文化創造への企業変遷
- 現代起業家への教訓と学び
朝ドラ「あんぱん」で描かれるキュウリオとサンリオの実話 ~戦後復興から文化創造企業への変遷を読み解く~

ドラマ「あんぱん」で、八木信之介(演:妻夫木聡)が経営する会社の社名変更シーンは印象的。「九州コットンセンター」から「キュウリオ」へ。
この名前の響き、実は英語の「curio(キュリオ)」から来ているんです。curioは「珍品、骨董品、愛らしい小物」を意味する言葉で、まさに雑貨会社にふさわしい名前といえるでしょう。

私は、制作陣の巧妙さに感心しています。
「九州」という地名に「curio」をかけ合わせることで、地域性とグローバルな響きを両立させている。これって、実際にサンリオがたどった道筋と驚くほど似ているんですよね。
サンリオ創業の実話を紐解く
サンリオの前身「山梨シルクセンター」は1960年8月に設立され、1973年4月にサンリオへと社名変更しました。創業者の辻信太郎氏は山梨県庁職員から転身し、当初は絹製品の卸売業から事業をスタートさせています。
興味深いのは、サンリオのオリジナルデザイン第1号は「いちご」で、山梨シルクセンター時代にいちご柄のコップやハンカチで人気となったという事実です。
70年代サンリオ
— 太田由貴子 (@creamy_yukiko) June 10, 2023
デッドストックのいちごシリーズのハンカチです。「SAN-RIO」のシールがついています。1973年に商号を(株)サンリオに変更したため、このハンカチはおそらくその頃のものだと思います。
いちごシリーズは1962年から。オリジナルデザイン第一号です。 pic.twitter.com/vZUsfejMLk
つまり、実際のサンリオも「地域密着の問屋業」から「キャラクター雑貨の先駆者」へと変貌を遂げたのです。
これは朝ドラの設定と完全に重なります。「九州コットンセンター」も綿製品を扱う地域企業から、夢と愛らしさを届ける「キュウリオ」へと生まれ変わる。ここに制作者の巧みな脚色を感じます。
1973年という運命の年
雑誌『詩とメルヘン』は1973年5月に創刊され、編集長はやなせたかしが務めました。そしてサンリオへの社名変更は1973年4月で、『詩とメルヘン』創刊は1973年5月と、ほぼ同時期。
これは偶然ではありません。戦後復興から高度経済成長を経て、日本が物質的豊かさから精神的な充足を求め始めた時代の転換点が1973年だったのです。
オイルショックもこの年に起こりましたが、一方で「心の豊かさ」を求める文化が花開いた年でもありました。

私が興味深く思うのは、やなせたかし氏とサンリオの辻信太郎氏という二人の巨人が、この時代の空気を敏感に察知していたことです。
物を売るだけでなく、「夢」「やさしさ」「愛」といった目に見えない価値を商品に込める。これは当時としては革命的な発想だったはずです。
「サンリオ」という名前の由来は諸説あり

サンリオという社名は、スペイン語の San Rio(聖なる河)に由来し、「人類が最初に住み始めたといわれる河のほとりに聖らかな文化を築きたい」という思いが込められています。
ただ、諸説があって、サンリオのサンリは山梨から来ているという説も存在します。これもまた興味深いですね。
公式には「聖なる河」の意味としながらも、実際は「山梨」という地名が起源の一つかもしれない。つまり、サンリオも「地名+新しい響き」という組み合わせなんです。
朝ドラの「キュウリオ」も同じ構造です。「九州」という地名に「curio(愛らしい雑貨)」を重ねることで、土着性とモダンさを両立させている。これは偶然の一致ではなく、制作陣がサンリオの命名パターンを研究した結果だと私は確信しています。
やなせたかしとサンリオの深い関係
『詩とメルヘン』を発行したサンリオは、やなせの代表的詩集『愛する歌』の発行など、やなせの創作と深くかかわっています。
また、1973年には月刊絵本「キンダーおはなしえほん」にアンパンマンが初登場し、同じ年に「詩とメルヘン」も創刊されています。

ここで、わたしの一つの推測を。
もしかすると、やなせ氏と辻信太郎氏の出会いは、戦後復興期の「優しさ」や「愛」を商品化したいという共通の想いからだったのかもしれません。
二人とも戦争を体験した世代で、サンリオの企業理念「みんななかよく」は、創業者が戦時中に空襲を体験したことが背景にあります。
この精神が朝ドラ「あんぱん」にも脈々と受け継がれているのを感じます。主人公が困難に直面しても、常に「人を喜ばせたい」という想いを忘れない。
「キュウリオ」という社名にも、商売だけではなく「愛らしいものを通じて人々を幸せにしたい」という願いが込められているのでしょう。
現代に響く「キュウリオ」の意味
現在のサンリオは、ハローキティやマイメロディなど世界的なキャラクターを生み出す巨大企業です。その原点は「山梨の絹問屋」でした。
この変遷を考えると、朝ドラで描かれる「九州コットンセンター」から「キュウリオ」への変化は、決して荒唐無稽な話ではありません。
実際、日本の多くの企業が高度経済成長期に同様の変革を遂げました。ただ、サンリオのように「愛」や「やさしさ」という価値を商品化することに成功した企業は稀です。
SNS時代の今、人々は常に新しい刺激や「映える」ものを求めています。そんな時代に「キュウリオ」という響きは、古き良き雑貨文化と現代の好奇心文化を結ぶ架け橋のような存在に感じられます。
「curio」には「好奇心をそそるもの」という意味もあるからです。
データから見るサンリオの成長
1973年度から1975年度にかけて、サンリオは売上高で年間122%〜350%の成長を遂げました。これは驚異的な数字です。
社名変更と『詩とメルヘン』創刊がいかに成功だったかが分かりますね。
朝ドラでも、「キュウリオ」への社名変更後の展開が描かれるとすれば、同じような成長ストーリーになるでしょう。ただの綿製品問屋から、人々の心を豊かにする企業への変身。これは戦後日本の縮図そのものです。
年度 | サンリオ売上高成長率 | 主な出来事 |
---|---|---|
1973年 | 社名変更実施 | 山梨シルクセンター→サンリオ、『詩とメルヘン』創刊 |
1974年 | 122%成長 | キャラクター事業本格化 |
1975年 | 350%成長 | ハローキティ誕生前夜 |
朝ドラが描く「夢の商品化」

私が「あんぱん」を見ていて感じるのは、制作陣の深い愛情です。
単にやなせたかし氏の人生を描くだけでなく、その時代背景や関わった人々の物語も丁寧に織り込んでいる。「キュウリオ」という架空の会社名一つとっても、これだけの背景とリアリティがある。
やなせ氏の「アンパンマン」も、決して最初から成功したわけではありません。
『詩とメルヘン』は1973年5月から2003年8月まで、通算385号が刊行されました。30年という長い年月をかけて、やなせ氏は自分の世界観を育て続けたのです。
「キュウリオ」という名前にも、そんな長期的な視点が感じられます。一時的な流行ではなく、時代を超えて愛され続ける「愛らしいもの」を作り続ける企業。それが「キュウリオ」の目指すところなのでしょう。
現代への教訓
2020年に辻信太郎氏から孫の辻朋邦氏にサンリオの社長が交代しましたが、それまで60年間、信太郎氏がずっと現役で会社を牽引してきました。これは驚くべき継続力。
朝ドラ「あんぱん」で描かれる「キュウリオ」の物語も、おそらく一代で終わる話ではないでしょう。地域の小さな問屋から始まって、世代を超えて愛される企業へと成長していく。そんな壮大な物語の序章を、私たちは今見ているのかもしれません。
現代の起業家や企業経営者にとって、利益を追求するだけではなく、人々の心を豊かにする「curio(愛らしいもの)」を提供し続ける。それが持続可能な企業経営の秘訣なのかもしれません。
まとめ :朝ドラ「あんぱん」のキュウリオ、実はサンリオがモデル
朝ドラ「あんぱん」の「キュウリオ」は、サンリオの創業史、やなせたかし氏との友情、そして戦後日本の文化的変遷が込められた、深い意味を持つ名前です。
「九州」という土地への愛着と、「curio(愛らしいもの)」という普遍的な価値の融合。地域に根ざしながら、世界に通用する価値を創造する。これは現代のグローカル経営のお手本とも言えるでしょう。
サンリオが山梨の小さな絹問屋から世界的企業になったように、「キュウリオ」もまた、人々の心に愛らしい夢を届け続ける企業として成長していくことでしょう。
私たちが朝ドラを見ながら感じる温かさや希望は、「キュウリオ」という一つの名前に込められた、制作者たちの深い想いの反映なのかもしれません。
覚えておきたいポイント
- 「キュウリオ」は英語curioから来ている
- サンリオは1973年に社名変更した
- 『詩とメルヘン』も1973年創刊
- 山梨シルクセンターが前身企業
- 地名+新響きが命名パターン
- 1973年は文化転換の象徴年
- 物質から精神的価値への変化
- やなせ氏30年間の継続力
- 辻信太郎氏60年現役の情熱
- 愛らしさが持続経営の鍵